2026年5月17日日曜日

『セックス・エデュケーション』で「With Or Without You」は2度流れる

 突然ですが、『セックス・エデュケーション』シーズン4・エピソード6の話をさせてくれ~~(本当に唐突だな)。

『セックス・エデュケーション』はNetflix制作の連続ドラマで、セックスセラピストの母を持つ内気な男子高生・オーティスが、自らも学園内でセラピストとして活動を始めることで巻き起こる騒動を描いた青春コメディ。2023年にシーズン4で完結しています。

とても評判がいいドラマなのでご存じの方も多いと思います。私も育休中に見始めて、なんて面白いの!とシーズン3まで見たんですが、シーズン4は見るタイミングを失っていたんですよね。1話が1時間超と長めなので、小さい子どもがいるとなかなか時間がとれずで。
でもようやく今年になってからシーズン4を見始めたんですが、毎話やっぱり面白えな~~と感心しています。

本作の特徴として
・群像劇で、いくつかのエピソードが同時進行していくこと
・ラストに必ず次の話への強いフックがあること
・感情を揺さぶる展開(いい方にも悪い方にも)が詰まっていること
・キャラクターがどんどん変化していくこと
があると思うのですが、漫画原作者の視点から見ても勉強になることばかりです。

特にキャラクターの変化には驚かされます。シリーズを通して、キャラクターが意外な人と恋愛関係になって、別れて、今度はまた違う意外な相手と…みたいな展開もあるんですが、びっくりするけど納得感もあるというか。
特に素晴らしいのがアダム、エイミー、ルビーのキャラクターアークだと思っていて、いじめっ子で嫌な奴だったアダムが、バイセクシャルであることに気づき、失恋、両親の別離を経て、不器用ながらゆっくり成長していく姿には胸を打たれますし、当初「おバカな可愛い女の子」の役割が強かったエイミーが、性被害にあったことで自分なりのフェミニズムに目覚めて自己表現の手段を得ていく姿は応援したくなります。
そしてルビー! 当初は性格の悪い「学園の女王様」として描写されていた彼女が、最終シーズンに至るまで、こんなに物語にからんでくるとは。オーティスのことが好きなのに振り向いてもらえなくて、オーティスの本命は最初から最後までメイヴで、でも頼られると放っておけなくて、オーティスのために一肌脱ぐ…なんつういい女なんや。エピソード6のラストはまさにルビーが一皮むける瞬間で終わっていて、震えました。

で、今このエピソード6まで見終わったんですが、これが本当にすごい回だった!
ヒロイン・メイヴの母の葬儀というシリアスな回なんですが、葬儀という舞台装置は登場人物を一か所に集める役割もあり、それを生かしています(『ゴッドファーザー』における冒頭の結婚式と同じですな)。
薬物中毒でいわゆる「毒親」だった母の葬儀ということで、メイヴは複雑な気持ちで臨みます。しかも同じく薬物中毒の兄が遅刻してきて、「最悪な母親ぶり」を暴露して、葬儀の雰囲気を壊してしまう。一時中断し、逃げたメイヴが戻ってきて、用意してきた言葉ではなく、即興で母へのリアルな想いを弔辞として読む、という非常に魅せる展開です。

母が好きな曲だったということで、葬儀の冒頭でU2の「With Or Without You」の導入が流れる。まずここで視聴者に「おっ!」と期待させておきながら、音響の接続不良で切れてしまう(コメディ要素)。
しかしメイヴの感動的なスピーチのあと、参列していた母校の先生(音楽クラブの指導者でもあった)が、「よし!」と、会場のピアノで「With Or Without You」を弾き語りする。


このおかげで、普通に音源をかけるよりも印象的で感動的なシーンになっているし、葬儀という舞台設定のおかげで、久しぶりにこの先生が登場することも自然な流れになっていて、シリーズ最初から見ていたファンへのサービス的な役割もある。本当に素晴らしい、よく練られた脚本と演出だと思いました。

隠れていたメイヴを説得して連れ戻すのが、主人公のオーティスや親友のエイミーではなく、メイヴの隣人で元彼でもある、車椅子のアイザックというのもいい。皮肉屋なアイザックだけど、メイヴと同じく複雑な家庭で育ってきた彼だからこそ、「壊れた家庭の子どもがどんな思いをしているのかみんなは知らない」「だから君がスピーチするんだ」と勇気づける。さまざまな登場人物がいて、役割がかぶらず、それぞれ最適な行動をする。このキャラクターの書き分けも勉強になります(そして私はお察しのとおり、アイザックが大好きなのだった)。

最終回まであと2話だ。見終わるのがもったいないけど楽しみすぎる~!