2023年7月30日日曜日

元気です!

前回の日記から半年経ってしまいました。更新が遅くなりすみません。元気です。
2021年9月に生んだ子どもはもうすぐ2歳で、この1か月で言葉がぐっと達者になり、「ぎーざ!(銀座線)」「ばいきーだ(バイキンマン)」などと言っています。毎日成長の連続で驚き&かわいい。
子を産む前から「よその子の成長ははやいな」と思っていたけど、違うんだわ。すべての子どもは成長がはやい。
調べたらきっと成長曲線の正確なグラフがあると思いますが、本当に急勾配。心身ともにあっというまに乳児~幼児~小学生に変貌していく。中学生くらいになったら多少穏やかになるのかな? なんにしろ、20代以降のそれとは比べ物にならなくて、驚くしかない。大変さはもちろんあるけど、それよりも「ほう、これが噂のイヤイヤ期前兆!」とか「こんな宇宙語を話すのは今だけなんだろうなあ」とか思うと、楽しい気持ちのほうが強いです。こっちも人生の経験値積んでいるので割とドンとしていられるのは、高齢出産のメリットかもしれません。そりゃうるせー!めんどくせー!とは思うけど、「へいへい」と笑って対処できるというか(たまたま今のところ有難いことに心身ともに大きなトラブルがない、というのは前提として)。

一方、仕事は急にこの4月に、ウェブ編集部から書籍編集部に異動になり、古巣とはいえど忙しい日々を過ごしています。
私、今まで自分の会社のこと、社風が合って好きだし、そこそこ結果も出してるし、女だし(それの良し悪しはさておき、ある程度女性を出世させる風潮があると思うので)いずれは幹部になるかもな、それもいいなと勝手に思っていた。んですが、今回けっこう雑な人事をされて、ヒアリングもなしに1歳児がいてフルリモートの仕事からそうじゃない仕事に異動になって、けっこうびっくりした。
なるほど、こういう不条理を感じて人は転職したりするんだな~と思ったりしました。自分はカッとしなかったけど後進のためには人事部に問題提起したほうがよかったかも、とも思った。

そんな不安定な時代、今のところ私が転職を選択肢に入れないのは、副業を始めたからかもしれないです。
なんと、おかげさまで漫画原作者としてデビューしました。2022年5月の日記で微妙なにおわせ予告をしておりましたが、私が担当した漫画原作が1月より連載開始しております。


私は中学生の頃白泉社のヘヴィー読者で、自分でマンガも投稿していて、花とゆめ、LaLaはもちろん別冊もみっちり立ち読みし、さらに新人作家にお手紙という名の批評&感想を送り付けていました。101-0063 千代田区神田淡路町2-2-2…って白泉社の住所も暗記していたほど。

そのうちに作家さんから「担当編集さんより詳しい批評です笑」というお返事をもらったり、自分でも「設定やストーリーを考える方が好き、絵に対するパッションはない」と感じたりして、高校生でモード誌やカルチャー誌を読むようにもなったことから「編集者になろう」と人生目標をシフトしたわけですが、その目標をかなえたあとでも、「人生でいちばんかなえたかった夢は漫画家」とたびたび思っていました。

なので、いろいろな偶然が重なって、36歳でその夢をかなえることができて、本当に驚いているし、とにかくうれしいです。
いや驚いているけど、同時に「がんばるとこういうことあるよな」という達観みたいなのも不思議とあって。自分がそれにふさわしい、というよりは、世の理として、そういうのあるよねって受け入れているような気持ちです。うまく説明できないけど。

2010年から同人誌で小説執筆を始めて、そのクオリティ自体はまあまあだと思うけど、とにかく毎回完結させることは大切にしていました。
漫画原作者の仕事、特にWebtoon(タテカラー)の原作は、「こういうテーマで、こういう要素を入れてつくりましょう」と企画が始まるので、三題噺の派生版だと思います。私は過去に「グリム童話の翻案」とかお題を決めて数日間で書いていたので、お題ありきのシナリオ作成ができる、そして必ず完結させられる、と評価されてお話を振ってもらえたのかなと思うと、すごく光栄で嬉しいことだと思います。

作品は今日7月30日に最新39話が更新されました。いま起承転結の「転」のめっちゃいいところなのでぜひ読んでほしい~! 最新5話分は課金領域ですが、それより前の分は1日1話無料で読めるシステムです。LINEマンガでも同時連載中です。
掲載よりかなり先行して制作しているので、じつはそろそろ最終回を書き終わりそうなんですが、自分にとっても学びのある、なによりとても楽しい経験になりました。

専業作家になりたいとか、自分名義で出版したいとか、そういう大志があるわけではないんだけど(出版はできたらラッキーだけど)、私はやっぱり常になにか書いて発信するのが好きだし、それがどんな形でもいいのかもしれない。書いたもの、企画したものを通して、「サイコ相変わらず元気にやっとるな」と思ってもらえるのが目指すライフワークかな、と最近は思ったりしています。


2023年1月14日土曜日

いつまでも寝てね

あけましておめでとうございます。
本当は、前回の続きで、パーッと明るい告知をしたかったけど、その前にどうしても書くべきことができたから、書くね。

数日前、友達を亡くしました。
書きづらいけど、死因は自死です。
40歳を前に彼女は亡くなりました。

年に1~2回くらい会う友達で、超仲良しかと言われればそうじゃない、でも遡れば12年くらいの付き合いで、お互いの家に行き来もしてたし、信用できる存在で、分かり合えてるなって感じる瞬間がちょこちょこあった。なによりも、サイキッシュが元で知り合った人でした。


もとはMichelle Branch「Hotel Paper」のレビューを検索して、サイキッシュにたどりついてくれて。今はもう彼女のはてなダイアリーは見られないのだけど、そのとき書いてくれた内容が嬉しすぎて、正確な文章は忘れてしまったけど、ニュアンスはずっと覚えています。
"なんだか腑に落ちることばかり書いているなあと思っていたら、年下ということが判明して。そのクレバーさに愕然としながらも、悪い愕然ではなく、こういう人がいることが嬉しかった”
というようなことを書いてくれていて。
そのときメールで返事をしたはずが、なぜか届いてなくて。でもその数年後に、ツイッターでたまたまやりとりして、「あのときのあの人ですよね!?」となって、2011年6月に御茶ノ水で会ったのが付き合いの始まり。
それからSNSでつながり、定期的に会うようになり、フジロック常連組だったので現地では必ず会っていて、コロナ禍でも出産前の2021年6月にアフタヌーンティーして、その後は会えてなかったけど、出産祝いもくれたし、ちょこちょことやり取りしていたので、今は本当に、死が現実と思えなくて、ただ呆けている、そんな状態です。

一方で、確かに、これまでの彼女の言動を考えると、長生きしたくない、生きることに納得していない人だというのは感じていて。会っているときに言い分をまくしたてるような人ではけっしてなかったけど、彼女のツイッターやブログを読む限り、ずっとそういうことを抱いて生きている人なのはわかっていました。

今回、自分で死を選んで、遺書的なメッセージも残されていて、それを読むと、衝動的なことではなく、いろいろと考えた結果だったことは、よくわかります。
おそらく家族あて、友人・知人あてのメッセージがそれぞれ用意されていて、ご遺族がSNSアカウントにログインする手立てもしていたようで、かなり綿密な計画だったのだろうと。
死ぬってかなり大変なことだと思う。それを誰にも悟られずに、一発でやり遂げたことに対して、なんなら、よくやったな、すごいな、やりおったな、とすら感じている部分もあります。
人生って自分の精神と体を使った実験みたいなものだと思う。彼女は40年近い人生で、ずっと試行錯誤した結果、死ぬ以上にいいことはないという結論が出て、それを実現したんだと思います。そのことは、本当によかったと思う。
でも一方で、大切な友達を亡くして、すごくさみしい。
彼女が考え抜いたうえで選んだ結論を支持したい。でもこの「すごいじゃん!」とか「どういうふうに準備したの?」とか、そんな答え合わせをしたかった。死ぬという最大のサプライズ、やりっぱなしじゃつまんないじゃん、一緒に話そうよ……なんて、無理なのに思ってしまう。

今はなき新宿三越のジュンク堂で開催された、雨宮まみさんの初期のサイン会に誘ってくれたね。壊される前のホテルオークラのプールにも一緒に行ったし、リノベーションに興味があって、お互いの家にも行き来した。

もう二度と会えなくても、ときどき「元気?やってる?」「やってるよー」なんてやりとりできたらいいのに。わかっているけど、それができないのが、死ぬということなのが、改めてつらすぎます。

明日、お別れの会が開催されるので、行ってきます。死に顔を見たら、またきっと思うことがあるかな。
ああ、きっと死ぬことは絶対に止められなかっただろうけど、それでも死ぬ前に話したかったな。

眠ることがなにより好きだった人に。どうぞ、ぐっすり、いつまでも寝てね。

2022年6月29日水曜日

(sic)boy、Bialystocks、優河、宇多田ヒカル

HUNTERのレインローファーを買おうか迷っているあいだに、梅雨が明けてしまった。
マジで暑すぎて7月8月を乗りきれる気がしないのですが…? 電力も心配だし物価も上がるし、7月の参院選で暮らしが苦しい状況が変わってほしいけど、与党がだらだら勝ちそうで怖い。

というところから、特に脈略なく、最近聴いている音楽について。
子どもが生まれてから、イヤホンで音楽を聴くことがなくなり、在宅ワーク中にSpotifyをかけっぱなし、というスタイルが主になりました。
会議続きで音楽が聴けない日があるとテンションが下がる。やっぱり常に流れててほしいんじゃ。

・(sic)boy

いま一番聴いてる。すごい好き。
日本人ラッパーなんですが、金髪で黒いアイシャドウ塗ってて、サウンド的にもオルタナティブやミクスチャーの影響が強くて、ポスト・マローンやトラヴィス・スコットに近いことを日本でやっている人だと思います。
インタビューを読むと、なんでも幼少期からのロックスターがHydeだそうで、このビジュアルや世界観にも納得! 確かにラルク感もある。

・Bialystocks(ビアリストックス)

映画作家でもある甫木元空(ボーカル/ギター)と、他のアーティストのサポートやジャズのライブで主に活動している菊池剛(キーボード)からなる2人組バンド。

この曲、タイトルは出オチ感があるんだけど、美しいボーカル、空間性、曲の構成、せつないひっ迫感に、一聴してハマりました。ポップスなんだが、よく聴いていると背景にジャズっぽいピアノの音色や口笛が入ったりする。ほかの曲も悪くないけど、この曲が突出して好きです。

・優河

最新のお気に入り。エゴラッピンをマイルドにしてアコースティック感を足した感じ。歌声にとても説得力があり、派手なプロダクションじゃなくてもきちんと成立している音楽です。

「灯火」という曲が去年、金曜ドラマ『妻、小学生になる。』の主題歌になってたみたいですね。しかも石橋静河のお姉さんらしい。ということは石橋凌と原田美枝子の娘…。私、原田美枝子が大好きなので、気づかずたどり着いてうれしかった。

期せずして紹介した3組、全部日本人になってしまった。意識して聴いているわけではないですが、インディー寄りの邦楽、聴きごたえがあるものが多くなっているなあという印象です。
久しぶりにライブも行きたい。なんとちょうどBialystocksと優河の対バンがあると知って、行くしか!となったけど、すでにチケット売りきれ後だった…。

あと宇多田ヒカル『BADモード』ももちろん買って聴いています。『Fantome』『初恋』は聴いていなかったので、オリジナルアルバムは久しぶり。自分と宇多田のタイミングが合ったという感じでうれしい(でも世間的な評価も割とそういう印象)。
スムースで心地よく、洗練されていて優雅で、身をゆだねて陶酔しそうになるんだけど、落とし穴のように凶暴さや死を思わせる幽玄があって、全然まったりさせてくれない。恐ろしく美しいアルバムだと思います。
曲で特に好きなのは「One Last Kiss」「PINK BLOOD」かな。

2022年5月6日金曜日

よい休暇を

ひい、最後の更新から7か月以上経っていた。
つまり赤子がいる生活も7か月目に突入しております。このゴールデンウイークが終われば、仕事復帰です! 

あっという間、確かにあっという間なんだけど、年を取るほど月日が経つのってスピーディーになっていくじゃないですか。それを考えると、あっという間ながらも濃密で、やりきった感のある育休期間だったと思います。

前々回の日記タイトルを「a long vacation」としたけど、実際に経験してみて、「自由に過ごせる最後のタイミング」と言われていた産休よりも、赤子のいる育休のほうが、個人的には休めた感じがする。2021年8月ごろがコロナの脅威MAXだったというのもありますが。
22歳で就職して、65歳で退職するとして、転職でもしない限りこういう長いお休みはとれないわけで。仕事始めて13年目、いいタイミングだったなと。

もちろん赤子のペースに合わせる生活は、体力的には大変で、真の意味での休みとは程遠いのだけど、それでも人生でこういう時期があるのすごくいいなと素直に思いました。
ベビーカーに乗せてあてもなく散歩したり、ミルクを飲ませながらスマホを操作するテクを身に着けたり、膝の上であやしながらNetflixで『セックスエデュケーション』シーズン3を見たり……
ラッキーなことに割と育てやすい、神経質でない性質の子なので、ランチやカフェ程度なら結構一緒に外出もできた。もともと歩くのは好きだけど、ベビーカーで近所の知らない道を適当に歩いたりするのが本当に楽しくて。毎日1日1万歩とか活動してたから、仕事復帰すると逆に運動不足になりそうです。


また育児をしてみて思ったのは、とにかく「孤立」がいちばんよくないということ。
産後の健診とかでも、「頼れる人はいるか」「ストレスを感じていないか」などを手厚く聞かれるんだけど、とにかく育児の主体者(主には母親)が孤立するのが危険なんですよね。
私は夫が在宅ワークなのがかなり助かりました。もちろん日中は彼も仕事をしているわけだけど、もし何かあったときにすぐ頼れる大人がいる、というだけで心強さが違う。
逆に、ずっとワンオペで実家も近くにないような場合、お世話の労力そのもの以上に、「赤ちゃんの命をたったひとりで預かっている」という恐怖心ですり減ってしまうだろうと思う。
もっと些少な、たとえば赤子がとんでもない量のうんこを漏らしたときなんかでも、ひとりだと「どうしよう!つらい!」ってなるかもだけど、ほかに大人がいると「げらげら!うんこすげえ!」ってなれるよね。

そして4月からは保育園に通わせ始めたわけですが、もともと「こんなに小さいのに保育園に行かせてごめんね」的な気持ちがほとんどないタイプですが、一度通わせ始めたら、もう後戻りはマジで無理。保育園の先生方本当にありがとうって感じです。
親が解放されるというメリットだけではなく、7か月にもなると親が単独でできる遊びのネタも尽きてきて、それならプロにまかせて、月齢の近いお友達と安全に楽しくのびのびと過ごせたほうが断然いいと信じています。


そんな育休でしたが、実は新しいチャレンジも始めておりまして……。
当初は資格の勉強でもしようかなあと思っていて、いちばん取りたかったのはワインエキスパートなんだけど、さすがに授乳中に受講するのはいろいろ問題があるなと断念していたら、代わりに副業の話が転がり込んできた。
まだオープンにできないので曖昧な言い方になってしまいすみません。でも、なんと創作関係でお金をもらえることになりそう!

2010年から小説を書き始めて、本当に趣味というか自分自身の楽しみのためにやってきて、デビューしたいとかは思ってなかったけど、素人なりに20作近く毎回きちんと完結させて書いてきた経験が、ここにきて生きることになって、それは本当にうれしい。

30代中盤になって、妊娠出産という弩級タスクに挑戦していたら、それが引き込むようにさらに新しい重大タスクが始まって、人生って面白いな~まだまだやれるな~とわくわくしております。
秋くらいに告知できるのではないかと思うので、楽しみにしていてください。何より私自身が楽しみだ!


またツイッターをご覧いただいている方には二重の告知になってしまいますが、妊娠期間についてのエッセイを発表しておりますので、よかったらこちらもぜひ。
いずれ出産育児編も書きたいと思っています。


あとアンケートのご回答もありがとうございました。こんな細切れ更新のサイトを今でも楽しみにしてくださっている人がいる、なんなら人生の一部として取り込んでくれている人がいること、うれしく、勇気が出ます。こちらこそありがとうございます。

ゴールデンウイークもあと2日、皆さんよい休暇をお過ごしください。


2021年10月1日金曜日

Wake Me Up When September Ends

 ご報告です。9月中旬、無事に子どもが生まれました!

すでに退院し、夫と3人の暮らしを始めております。
おかげさまで母子ともに健康です。

といいつつ出産はやっぱりすごくて、失血1リットル、会陰切開等々、母体はなかなかダメージを受けました。
陣痛から分娩までは4時間程度で、一般的には早い方なのですが、計画無痛分娩の割に難産で、終盤は「もう無理、生める気がしない!」と心の中で叫びながらいきみ続けていました。骨盤に引っかかって?うまく出てこれなかったみたいで、最終的には吸引分娩に。
生まれたての子と対面したときの私の第一声、ありがとうとかやっと会えたねとかじゃなくて、素で「この野郎!」だったもん。
のちに麻酔医に、無痛じゃなかったら気絶してたかもと言われましたが、マジで痛かった……。すべての経産婦よく生きてるな。
ただ産後の経過はよく、回復が人より早いようなので、無痛分娩にした甲斐はあったなと思います。

自分の子どもはなるほど、確かにものすごくかわいい。
病院にいる間は理性が効いていて、「赤ちゃんの見た目は猿か亀かガッツ石松に分類されるというが、この子は亀だなー」くらいに思っていたのですが、退院後は夫と「もしかして、この子ものすごく美形なのでは!?」と、ことあるごとに騒いでいます。
同時に新生児のままならなさの洗礼も浴びまくっていて、何をやっても数時間寝ないときは寝不足になるし、心もつらいし、近所迷惑も気になるし、消耗します。人ひとりを引き受けるってこういうことなんだなと。
赤ちゃんに合わせて寝たり起きたりしながらひたすらお世話する日々は、まだ現実感がなくて、ときどき寝ぼけた先に「あれ、これ今後も毎日続くんだっけ?」と、ハッとしたりする。

周りの人たちも想像以上に出産を喜んでくれていて、なかでも実の母が本当にうれしそうで、こういうモーメントが人生に訪れたことが得難いな、ありがたいなと感じています。
その一方で、母から来た「やっぱり子どもをもててよかったでしょう」というLINEの文面に、一瞬真顔になる自分もいて。母は心から善意、祝意からそう言ってるのがわかるし、言いたいこともだいたいわかるんだけど、笑顔で「うん! 本当にそうだね!」とはならなくて。
私からは
「無理につくる必要はないと思っていたけど、生まれてみたらたまらんね。子育てすることで、夫ともっと仲良くなれる気がするよ」
と返した。素直な想いだし、そのときの自分としてベストな返事だったと思う。

生まれて2週間程度なのに、この子がいなくなったら……なんてもう考えられない。でも、こう書くと気に障る人もいるだろうけど、子どものいない人生の自分も、どこかの世界線で生き続けるような気がしていて。
どっちに進んでも自分だし、自分らしい人生は送れると思う。分岐した先の世界で楽しくやってねって思います。
この感覚はどんどん失われていくかもしれないから、今まだ、輪郭がつかめそうなうちに、ここに書いておきます。

* * *

前回の記事のアンケートに答えてくださった方々ありがとうございました。とてもうれしく拝読しております。
気持ちの上では個別に返事を返しています!
引き続き設置しておりますので、まだの方も、ぜひ一言書いていってくださいませね。

2021年8月10日火曜日

a long vacation

2021年7月で、サイキッシュは20周年を迎えました!
15歳、高校1年生の夏から始めて、人生の半分以上、私という人間の開かれたパーソナルスペース、拡張した脳空間として機能してくれているんだなあ。
運営しているのは自分自身なのですが、とても面白いリアルタイム実験だなあってつくづく感じる。
ずっと見てくれている方も、ときどき思い出したように遊びにきてくれる方も、今日たまたま検索で引っかかってくれた方も、皆さん本当にありがとうございます。

せっかくなので久しぶりにアンケートフォームをつくってみました。
気軽に答えられる感じにしたので、よかったらぜひ遊んで行ってください。

さて、7月に20周年だったから、本当はその時期に更新したかったのだけど、8月にずれこんだのは事情があります。
今日は山の日の3連休明けの平日ですが、私はお休み。
ただの夏休みではなく、人生で最初で最後かもしれない、ちょっと特別なお休みに今日から入りました。いわゆる産休というやつです。
YES、妊娠した~~~
女35歳、コロナベイビーを腹に宿しております。じつは地中海旅行記を書いている途中に発覚したんだけど、とりあえずそのような気配は見せずに書ききったのであった。

妊娠したことは、インターネットでは明らかにしてきませんでした。最初は安定期に入ったら…と思ってたんだけど、なんとなく機を逃してねえ。
生まれたあとに発表するのも考えたけど、育児でうつろになってそんな暇なさそうだし、「十月十日」というこの期間の間に、生の声を書いておきたいというのはあった。
幸いにして、つわりもほぼなく、眠い以外の不調も少なくて、かなり元気なほうの妊婦だと思うのですが、それでも何があるかわからないのが妊娠だなあとしょっちゅう感じます。
在宅ワークになったの、かなりありがたかった。不安定な体で満員電車に乗って通勤するとか、コロナ以前の妊婦マジで無理ゲーすぎんか?と思う(もちろん今も外出せざるをえない立場の妊婦がたくさんいること、自分はめちゃくちゃラッキーであることは、理解しております)。
コロナが流行してよかった、とはけっして言えないけど、でも社会が変わるきっかけになったはずだし、何がどう人生に影響してくるのかわからんもんだなと実感しています。

せっかくなので今日撮影したばかりの近影だよ(@自宅洗面所)。

正面から見ると一瞬わからないのだが…

横から見るとどう見ても妊婦です。ありがとうございました。
体重増加はずっと控えめで、なんと8か月の時点では妊娠前プラス1.5kgというかなり優秀なスコアだったのだけど、9か月に入ってから急カーブで一気に体重が増えてきて、これが後期妊婦…とおののいている。
といいつつプラス1.5kgというのもカラクリがあって、つわり期に3kg痩せたんですよね。なのでそれも含めるとプラス4.5kgではあったのだが。
ちなみに痩せたのは吐いた、食べられなかったなどではなく、酒をやめたから、ただ一点それだけ…ホットケーキとか食いまくったのにどんどん体重が減ってたまげたよ。酒そのもののカロリーもあるし、むくみも減ったんだろうな。酒、こんなに好きなのに私を苦しめる存在。
でも不思議なことに、本当に妊娠するとそんなにお酒飲みたくなくなりました。当初は「ノンアルコール飲料をいろいろ試すぞ!」と思ってたけど、なんかそれも不要だなというか。ノンアルコールワインも結局ジュースだしなあ。甘い飲み物が飲みたいわけではないんだよな。
20歳以来の酒を飲まない日々を過ごしてわかったのは、酒の味わいって「ビールやシャンパンなら爽快感、赤ワインやウィスキーならうっとり感」、そして「苦味」なのかなと。
いい苦味って、じつはノンアルコール飲料には意外と存在しなくて。だったらコーヒーとか紅茶を飲むほうが手っ取り早い(カフェインもとりすぎは注意ですが)。
食事に合わせやすいのは、黒ホッピーにトニックウォーターかグレープフルーツジュースをちょっと足したやつかな。苦味をちょい足しすることで酒っぽくなる。

結局酒の話にいちばん文字数を費やしてしまったけど、そんな感じで妊婦生活ラストスパートを過ごしております。
秋には子どもが戸籍をもつ人間として実在しているのか…と思うと本当に不思議だけど、基本的には楽しみな気持ちが強いよ! 生まれたら生まれたで、かつてない感慨があるんでしょうね。それを体験するのが楽しみ。

コロナと猛暑で大変な夏だけど、私は元気にやっております。合言葉はサヴァイヴ。皆さんもどうぞお元気で。

2021年6月6日日曜日

『アフターキング』副音声解説

2010年4月から、趣味で小説を書き始めて、丸10年経ちました。

小学生のころに講談社ティーンズハート文庫に影響されて、何作か書いたりしたけれど、中学生ではそれが漫画に代わって、さらに高校生からは「自分が描くより編集の立場の方がおもしろい」と感じるようになり、日記やレビューはしこしこと書き続けてきたけど、フィクション創作からは遠ざかっておりました。

でもきっと、ずっと「物語」を書きたいという思いが心のどこかにあったのでしょう、たまたま連続で読んだジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』と桜庭一樹『私の男』がすごく面白くて、うわーっとなって、なんとなく温めていた「血のつながらない兄と妹の話」を勢いで書き始めて。
それが意外と書ききれてしまったので、楽しくなって、それ以降も書き続けてきました。

書くのはたいてい、2万字前後の中篇で、長くて5万字程度だった……のですが、見切り発車で始めて、結局8年以上もかけて、なんとか2019年に18万字(+番外編2つ)で完成させた作品があります。
『アフターキング』という小説です。

https://ncode.syosetu.com/n5824s/

東南アジアの小国・ヴェイラの首都の古アパートで、隠遁者のような生活を送るヒゲの男、ジェイル(32)。彼こそ、15年前にわずか17歳で退位した最後の国王だった。

正体を隠しながら静かに暮らす彼のもとへ、突然日本人の女子大生チセが押しかけてくる。ジャーナリスト志望のチセは、ジェイルを取材したいと言う。

パワフルで自由なチセに振り回されながら、ジェイルは諦めていた人生を少しずつ取り戻していく。だが背後では、彼を政変に巻き込もうとする不穏な動きが……。


サイキッシュでは書いている小説の具体的な話はしてこなかったけど、この作品はとても思い入れがあるのと、影響されてきた文化をぶち込んでいるので、副音声的な解説を残しておきたいなと思って。
小説本編を読んでくれとは言わない、でもこの解説は読んでいって!


・舞台は東南アジアの架空の国。15年前に王制から民主化したという設定で、王制への揺り戻しを図るクーデター計画がストーリーのメイン軸

いきなりどこに向けて書いてるんだよ……という感じですが、大学のゼミでは政治体制と民主化を専攻していたので、私にとってはずっと身近なテーマで。書き終えた今も、ミャンマーの政治動乱を見て、つくづく過去のことではない、他人事ではないと思います。

そして東南アジアも大大大好き……ベトナム、マカオ、ペナンなど、実際に旅をした、少し中国の影響を受けている東南アジアの都市をイメージしながら書いていました。

・主人公が元国王、32歳の引きこもりやさぐれヒゲ男子

血統よし、見た目よし、頭もいいと、設定だけ見たらチートなはずなのに、書きながら何度も「こいつ、なんて面倒な男なんだ?」と呆れるほど、うだうだ理屈っぽい主人公でした。私がこれまで見聞きして蓄積してきた「男子のダメな部分」をMAXに出力すると同時に、男子の内なる善な部分も信じながら書いた。
とくに男性メインのロックバンドの歌を聴くときに感じる、“這いつくばりながら、それでも光を求めている”感じというか。

どれだけスペックが高くても、自分の「穴」に向き合わない限り、自分らしい人生は送れない。どこかで腹をくくって、人生のケリは自分でつけるしかない。書き進めるほど、そんなふうに感じていました。

・年の差カップル、バディもの、探偵小説の要素

そんな七面倒な男を家から叩き出すには、生命力にあふれたヒロインが適任だろうと思いました。私の偏愛する「おっさん×少女」をつい書いてしまった。
ただ、主人公に都合のいいだけの女の子にはしたくなくて。動物的というか、小柄でかわいいけど獰猛さがあり、理屈ではなく自分のルールで行動するキャラクターを目指しました。このヒロインに関しては、逆に書きながら「何を考えているんだろう……」と思うほどでした。

年齢差あり、でこぼこのふたりが、街を駆け巡りながら、謎に体当たりしていく。ラブストーリーでもあり、冒険小説、探偵小説っぽい要素もふんだんに取り入れたつもりです。

・王族、上流階級、パーティ!!

ロイヤルへの憧れは私にももちろんあって、華やかな部分はもちろんのこと、「duty」を背負っていることに惹かれる。生まれながらにしてアイドルになることを義務づけられている人々。
自分がなりたいか?と言われると、けっしてYESとは言えないし、実際この主人公もしょっぱなから王位を返上しているのですが、それでも王族に生まれついたという事実は消せない。そんな人が、「その後の人生」をどう生きるか、はずっと好きなテーマです。

そしてパーティのシーンはやっぱりぶち込んでしまうよね。せっかくなのでタキシードとドレスを着せたかった。漫画だととてもじゃないけどパーティシーンの描写なんてできないけど、好き勝手に書けるのは小説のよさですね。


・Soundtrack

夏盛りの街が舞台で、また前述のとおり男性ロックバンドを強く意識しながら書いていたので、聴いていた音楽も男性ものが多かった。

Can You Take Me/Third Eye Blind

Reckless/J

10 Days Late/Third Eye Blind

Jasmine/Jai Paul

Bolero/Maurice Ravel

All Of The Lights/Kanye West

Inhaler/Foals

Lean On/Major Lazer feat.MØ&DJ Snake

NOW YOU KNOW BETTER/Mondo Grosso

Feel Your Blaze/J

U(Man Like)/Bon Iver

The Sound/The 1975

Non-dairy Creamer/Third Eye Blind

Walk On/U2

アルバム単位だとThird Eye Blindの4枚目『Ursa Major』(2009)が本当にぴったりで、特に1曲目の「Can You Take Me」が主人公の気持ちにフィットしすぎて和訳を何度も読み返していたほど。

なにかが起きる予感が肌の内側でゾワゾワとしている、お互いにもうわかっている、これ以上嘘はつけない、暴動の機運はすぐそこまできている、立ち上がって世界を変えなきゃいけない、あとは手を伸ばすだけ、私たちは似ている、今なら、そう今なら、この距離を越えられるかもしれない……
ちなみに歌詞に出てくる「I'm the mega collider when I take you」というフレーズがすごく印象的なのですが、mega collider(価値観を大きく揺さぶる存在、って感じの意味かな)という言葉はThird Eye Blindのレーベル名にもなっていて、「わかる、気が合うね!」ってなりました。バンドも困るだろうね。

「U(Man Like)」は書き終わる時期に出会った曲で、男子のうじうじした感じがやさしく穏やかに歌われていてキュンとする。終盤の気分にぴったりだった。「Lean On」はダンス×エレクトロだけど刹那的な感じが、ヒロインのテーマソングでした。

・オマージュをささげた作品
そんな大層なものではないですが、書いているうちに自然と、これまで影響された作品を意識する部分がありました。映画『オールドボーイ』、映画『ローマの休日』、小説『ねじまき少女』(パオロ・バチガルピ)、小説『この世界、そして花火』(ジム・トンプソン)あたりが出てきます。

『元国王のスピーチ』『美男ですね』『王の帰還』『とらわれの身の上』『FACES PLACES』『クロージング・タイム』あたりの各話タイトルも、既存作品から借りてます。クスッとしてもらえたらうれしい。

あと「Coldplayなんて、いま年寄りしか聴いてないでしょ?」的な会話も入れてしまった。Coldplayに恨みはないです……主人公は2000年代にオックスフォードに通っていたという設定なので、「Yellow」とか「The Scientist」をラジオですごく聴いていた世代です。


うう、我ながらめちゃくちゃ自己満足なあとがきを書いてしまった。すみません。でも今後の人生でこれだけじっくり書いて完結できる小説が生まれるかどうかもわからないし、記念に残しておきたかった。

もしご興味のある方は、上のリンクから読んでみてね!